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やっぱり小さくなくちゃ(笑)。
by today216
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魔法の力

先日、聞いたのですがF1マシンではダウンフォースが2トンもあるとの事。もちろんダウンフォースなどは機密事項でしょうから本当の所はわかりません。でも、そのレベルのダウンフォースが得られるという事を知って、前に書いた記事を訂正する必要が出てきました。

前に、「どんなクルマでもカーブを曲がる時の限界速度は同じである」と書きました。でもこれはダウンフォースのことは考えてませんでした。実際、雑誌などを見ると(ポルシェでの話ですが)、数十キロ程度のダウンフォースだったような気がしますのでその程度であれば誤差の範囲と思ってました。

これが2トンもある、という事になると話が違ってきます。F1カーは600キロ前後ですから自重の3倍以上ものダウンフォースがある事になります。となると前に書いた式、
魔法の力_f0043634_23262485.jpg


魔法の力_f0043634_23264063.jpg

になりますから
カーブの限界速度ははるかに上になります。ダウンフォースが自重の3倍とすると限界速度は2倍になります。

確かに、2トンものダウンフォースというのはある意味ばかげているようにも感じられます。でも前に書いたようにグリップ力よりはるかに大きなトルクがあるF1ではその余分なトルクをダウンフォースに回してグリップを得るように設計する、というのはとても合理的です。

ところで、このダウンフォースは翼理論に由来する力な訳ですが、翼理論というのはとても不思議な理論です。
飛行機のエンジンは飛行機(自分自身)を垂直に持ち上げる力があると思いますか?



答えは、、、、、、、、、
もちろん!!、(一部の戦闘機などを除いて)ノーです。つまり、
飛行機は空を飛べません(笑)。

これが翼理論の不思議な所です。自分を持ち上げる事が出来ないのに空を飛ぶ事が出来るんですね。もっと書くと翼は前向きの力を上向きの力に変換する。。。これはなんとなく理解できます。でもその前向きの力よりはるかに大きな力を上向きに発生させる。これは不思議ですよね。
じゃあ、飛行機が空を飛んでいる時、飛行機は何が支えてるんでしょうか? 上向きの力(揚力)はどこから来ている力なんでしょうか? 皆さんご存知のようにニュートンの力学では力はつり合う必要があります。

答えは、、、、地面が支えてるんです!!! 嘘と思ったでしょう(笑)。私は大学で流体力学の先生からこの理論を聞いた時、とても不思議でした。ただし、地面が支えているという事についてはその先生も確信を持って言っていたわけでは有りません。多分そうだろう、という程度だったと思います(ダウンフォースはじゃ何か、宇宙から押し付ける力が出てるんかぃ。。。と責めないでくださいね(笑))。
ちなみに鳥は翼理論で飛んでいるわけじゃないので羽ばたく力で自分を支えています。もちろんたどって行けば地面に力は加わってるんでしょうが(反力としてですね)。

ねっ、不思議でしょう。だから2トンのダウンフォースも翼理論由来の力であればエンジンが2トンの出力がある必要はありません。F1マシンに2トンのダウンフォースが有ったとしてもあながち馬鹿げている、間違いだろ、というわけでもありません。

この翼理論、前の摩擦理論とは違ってちゃんと証明されているのでご安心を。飛行機は空を飛べます(笑)。ちなみにこの不思議な理論を編み出したのはロシア人。飛行機はライト兄弟が有名ですが、翼理論がなければ飛行機はなかったのでつくづくロシア人は偉いと思います。私が翼理論を学んだのはまだベルリンの壁が崩壊する前。米ソ冷戦時代です。溶接技術も編み出したのはロシアで実用化したのはアメリカです。不思議な巡り合わせですね。

というのはさておき、ダウンフォースを魔法の力と書いたのは、小さな力で大きな力を生み出す、という事だけじゃなくて自重を増やさずにグリップ力を上げる事が出来る力だからです。自重を増やすとご存知の通り、加減速が小さくなります。クルマの運動性能からは車重は出来るだけ軽い方が良いのは皆さんご存知の通り。自重を増やさずにグリップ力を上げる、重量配分を駆動輪に持って行くのが一つの解です。RRですね。
ダウンフォースはもう一つの解。車重増加というマイナス無くグリップ(だけ)を増やす事が出来る魔法の力、というわけです。

ということで、私はGT系のクルマに付いている羽根をほとんど意味が無いと思ってたんですが、というか、クルマが速度を上げて行った時に生じる浮き上がる力(これも翼理論ですね)、を少なくするために付いている、という意味しか考えてこなかったんです。これは、ダウンフォースを得るためにはそれだけエンジントルクを消費するわけで(つまり空気抵抗が大きくなる)その分遅くなるはず、と考えてたんですね。あっ、誤解しないでください! 前に書いたようにダウンフォースと同じだけエンジントルクが消費されるわけでは有りません。翼理論に従えばより少ない力で大きなダウンフォースを得る事が出来ます。

911はRRですから元々グリップ力が他のクルマよりとても大きいはずです。でもそのグリップ力よりもさらに大きなトルクを発生する事の出来るエンジンを積む事が出来るようになった結果、その余ったトルクをダウンフォースに回すようになったんでしょうね。

もちろんこの魔法の力、重量配分を駆動輪に持って行くという単純かつスマートな方法論と違って欠点が有ります。飛行機が滑走路が無いと離陸できないのと同じようにある一定の速度が無いと魔法の力も働かないのです。止まっている時はダウンフォースは0です。つまりスタート時はグリップ力は自重のみで得なければならないので、もし本当に2トンの力で(実は2トンという数字は半分疑ってます(笑))、グリップを得る事に頼っているとするとスタートダッシュは出来ないはずです。また、カーブで速度を落とすとグリップ力は小さくなるはずです。カーブは速く回るほどグリップ力が大きくなるはずです。ただし、遠心力は速度の二乗で大きくなりますが。

そう考えると、911と同じ位の出力のエンジンを積んだFRのクルマはダウンフォースをもっとはるかに、たとえば911だと900キロ以上が後輪にかかってますがこれがFRでたとえば50:50の重量配分かつ同じ車重だと200キロ以上のダウンフォースを後輪にかけなければならないはずです。つまり空気抵抗の分、911より遅くなるはず、です。しかもグリップが同じになるのは有る速度以上に達した時だけです。
現代のスポーツカーは500馬力超とかエンジンパワーを競っている面も有ります。でもFRでRRとトルク競争をしてもあまり意味がありません(前に進みません)。RRって本当に良く考えられています。改めてポルシェという人の偉大さを思います。シンプルイズベスト、ですね。

閑話休題、修正した結論は、
ダウンフォースが数十キロ程度じゃなくて数百キロも有るように設計されているクルマは限界速度が大きい。

です。
by today216 | 2007-12-11 23:34 | ポルシェ
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